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    2015-12-24 18:34:28 | おーい!中村です!!

海中に沈む


大田市温泉津町の櫛島海岸には、近世から近代にかけて採石した痕跡が何箇所か残っている。

海岸の岩石は、火山灰などの火山噴出物が固まってできた「凝灰岩」というもので、比較的柔らかく、ちょっとした石製品などに使われる。切り出した石は、石材としては上質なものではないが、石見銀山の物流拠点港として栄えた温泉津だけに、船のバラストを兼ねて切石を現地調達し、積み込んだ可能性が高い。

ちなみにバラストとは、船の安定を保つための重りで、温泉津で荷を降ろして船体が軽くなると不安定になるために、代わりに積み込む荷がないときには石を積んでバランスをとった。

ところで、櫛島海岸では、海中に没した採石の跡が見られる。
島に渡る橋の手前、向かって左手の岩場には、円形の石を切り出しかけてやめた部分があり、現在、そこは年間を通じてほぼ海面下にある。
まるで、海底遺跡のようだ。





なぜ、こんなことになるのか?
興味深い現象だ。

前提として、海面下にある石を切り出すことはないだろう。ノミやツチを使うにも、水中では十分な力が得られない。採石当時は海面上だったはずだ。
採石跡が海面下に没した理由はなんなのか。

考えられることはふたつ。ひとつは地盤の沈降、もうひとつは海面上昇だ。
局所的な地盤の沈降かもしれない。しかし、過去数百年間に、この地域に局所的な沈降を発生させるような地震はなく、ある程度の規模での地滑りも当てはまりそうにない。

どちらかといえば、海面上昇の方がありえそうだ。

そこで、気象庁のサイトを探して、日本海沿岸における過去約100年間の潮位記録を見つけた。






上のグラフが、気象庁のサイトから引用した潮位変化。
海面は数十年の周期で上下を繰り返し、その差は80センチ以上にも達している。近年では1980年代から上昇傾向にあり、ここ数年は過去百年間でも最高位にある。

海面がこれほど変化しているなら、採石跡が低海面期に海面上に出ていた可能性は十分にある。採石跡の最深部がせいぜい1メートル。
過去100年間の最低海面を当てはめるなら、干潮時には十分に海面上になる深さだ。

残念ながら、採石の時期は不明で、1900年代以前の潮位記録もない。

結論には至らないが、海中の採石跡の謎をとく手がかりにはなるだろう。

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参考になる情報ありがとうございます.
良いお年をお迎え下さい.

by Mr.T ( 2015-12-31 11:54:48 )


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・氏名   中村唯史(なかむらただし)
・生年月日 1968年2月29日
・住所   島根県大田市
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