2015年9月のエントリー



    2015-09-05 21:41:44 | おーい!中村です!!

住みたくなる町


 大田(大田市大田町)は、その名の通り田の町だ。江戸時代までの町は三瓶川の左岸、西楽寺や正蔵坊、妙善寺などの寺が並ぶ一角が中心で、あとは城山へ至る道沿いに雪見の家並みがあるばかり、残りは田が広がっていた。大正時代に山陰本線が開通してから、町は北側に広がるけれど、それも大正通りの両側だけで、昭和の中ごろまでその様子は変わらず、やはり田が広がっていた。

 近年、田は随分減ったけれど、その名残のひとつに用水があって、町の中を水路が巡り、年中水が流れている。この水路が顧みられることはあまりないけれど、あまり個性が感じられない大田の町の、ちょっとしたアクセントになっている。

 水路の水は日の出の堰から引かれ、幹線となる水路にはたっぷりの水が勢いよく流れ、街中の側溝はその支線となり、緩やかに水が流れている。大田の町はまだまだ下水道の整備が遅れているのだけど、この水のおかげで側溝はそれほどひどい状態にはならず、それどころか様々な生き物が棲んでいる。シジミがいて、カワニナがいて、ヤゴがいて、カエルがいて、メダカがいる。ホタルが飛ぶ水路もある。大田の町は、意外にも生き物の宝庫だ。一工夫で、この水路は町の顔になりそうだが、今のところ水がある町の情緒はない。町を南北に分けて三瓶川が流れるが、そこにも川がある町の風情は感じられない。

 

 数日前、三瓶川にかかる宮崎橋からちょっと川を覗き込んでいたら、通りがかった人に声をかけられた。

 

「汚いですね。」

 

「そうですねえ。泡が浮いてますね・・・」

 

「どうしてこんなに汚いんでしょう?」

 

「堰堤で止めていることと、生活排水でしょうか。」

 

「昔は、覗くと魚がたくさん泳いでいたのに。」

 

 市街に差し掛かる直前までの三瓶川はホタルが飛び交い、清流の風情を保つが、町に入った途端ににごり、大きな溝と呼びたくなるような様子に変わる。何年か前に土手から降りる階段が設けられたものの、川辺で遊ぶ人の姿はまず見ない。たまに気まぐれで竿を出してみても、堰堤下の泡の中にはオイカワが潜んでいるものの、それ以外の場所では魚の気配はほとんどなく、放流されたコイが悠然と泳ぐばかり。むろん、ホタルの姿もない。魚が済まない川は川とは言えないだろう。

 川が再生され、魚が泳ぎ、初夏に街中をホタルが飛ぶようになれば、そんな町はちょっと素敵ではないだろうかと思う。でも、そうなったからって、1円にもならない。誰も得をしない。そうなんだよ、そうなんだ。だから難しい。役に立たない自然再生より、人の暮らしが優先だ。魚を見たければ、少し上流へ行けば泳いでいる。無理する必要はない。

 だけど、もしも機会があるならば、今より良くなる方法を選ぶことはできるだろう。その時でいいんだ。下流にはまだまだ田が広がっているので、堰堤は必要だ。なくすわけにはいかないけれど、改修する機会があれば魚が行き来できる堰堤に作り変えることは可能だ。両岸の堤防も必要だ。これがなくなったら大雨の度に町は水浸しになってしまう。必要だから作り変えるあるだろう。その時に、魚が棲める構造に変えることは無理ではないだろう。何年先か、何十年先か、そういう機会がある時には、下水道の整備も進んで川に流れる排水も随分少なくなっているだろう。しぶきがきらきら輝き、アユがのぼりホタルが飛び、子供達が水遊びに興じる川。道路の側溝にもメダカが群れをなして泳ぎ、カエルの声が聞こえて来る。そんな光景も不可能ではない。そんな町には住んでみたいと思う。1円にもならない魚が、ホタルが、人が住みたくなる町づくりにつながるかも知れない。20年先、50年先を見とおした町づくりには、目先では無駄としか思えない視点が案外役立つこともあるのではないだろうか。

コメント(2件) コメント投稿


あの田中陽希氏が,日本2百名山ひと筆書き〜グレートトラバース2に挑戦中.

予定では,92番目の三瓶山<男三瓶山>は12月3日.

詳しくは「日本2百名山ひと筆書き」で検索ください.

by Mr.T ( 2015-09-21 17:15:15 )

“住みたくなる町”ですか.私ならば災害の少ない場所,住民が穏やかな場所,交通がある程度は便利な場所,自然が残る場所などのうち,ある程度満たされている場所を選びます.私の場合,結局は生まれた所が終の棲家となりますが,上記条件がある程度は満たされているので不満は少ないです.欲を言えば「きり」がありませんので.まあ,人によって様々と思います.

by Mr.T ( 2015-09-06 19:35:12 )


トラックバック(0件) トラックバックURL:

トラックバックはありません。




ブログトップ

カテゴリ選択

エントリーカレンダー

<<  2015年9月  >>
30 31 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 1 2 3

最近のエントリー

最近のエントリーはありません。

最近のコメント

最近のコメントはありません。

最近のトラックバック

最近のトラックバックはありません。

エントリー履歴

プロフィール

・氏名   中村唯史(なかむらただし)
・生年月日 1968年2月29日
・住所   島根県大田市
・職業   NPO法人石見銀山協働会議副理事長

会員ページ


rss

携帯サイトアクセス用QRコード

QRコード