2016年1月のエントリー
石見銀山の要石
上の写真に写っているのは、河原に転がっていたただの石だ。
何かに使われたものでもなければ、珍しい石というわけでもない。
では、下の写真はどうか。
花のような配置にくぼみが並ぶ石。ただの石ではなさそうだ。
下の石は、大森代官所跡近くにある「梅の店」の店先に置かれているもの。
石見銀山で、銀を取り出す製錬の工程で鉱石を細かく砕く時の台座に使われた「要石」だ。相当数の要石が現存していて、今でも銀山川の川底から見つかったりする。
そう、もうお気づきだろう。
上下の写真の石は、表面の汚れ具合こそ違えど、大変よく似ている。
平らな面を持ち、側面も角ばって、五角形か六角形に見える。岩質的にも同じで、硬く緻密な安山岩だ。
要石は川合町忍原で採った石を使ったと伝わる。
そして、上の写真の河原石は、忍原を流れる忍原川の川岸に転がっていたものだ。この安山岩は石材や採石にも使われていて、忍原の左岸には大規模な採石場が稼働している。
この採石場の切羽を見ると、岩肌に垂直で規則的な割れ目が発達していることがわかる。火山岩にしばしば見られる「柱状節理」と呼ばれる割れ目だ。柱状節理は、火山岩が冷却する際に収縮することで入る割れ目で、その断面は五角形から六角形になることが多い。
要石は、この岩が山肌から崩れ落ち、柱が輪切りになるような形に割れた河原石を拾ってきて使ったのだ。柱状節理が発達する火山岩は、節理に沿って柱状に割れ、さらに細かく割れる時は、節理と直交する方向に割れることが多い。鉱石を叩き割る台座に必要な硬さと粘り強さを持ち、しかも直交する面で割れたものが多いので、台座として座りが良い石を入手しやすいことから、この場所の石が使われたのだろう。
ちなみにこの安山岩は、川合町を中心に石垣などにもしばしば使われていて、物部神社の拝殿の石垣もこの石である。
