2017年10月のエントリー
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古代出雲歴史博物館
古代出雲歴史博物館で島根の仏像展を開催している。
実際に見てはいないのだけど、タイトルを見てさすがだと感じた。
島根県が直営するこの博物館は、入館者数の実績もさることながら運営の軸がしっかりしていて素晴らしいと思う。その背景には長年にわたって積み重ねて来た島根県の文化財行政の基盤がある。
もともと古代出雲関連や石見銀山、中世益田などの歴史的遺産があり、加えて荒神谷遺跡や加茂岩倉遺跡など特筆すべき埋蔵文化財の発掘があった。これらの発掘調査等を通じて、島根県の文化財行政は全国でも有数の水準に達したという。さらに、澄田前知事の時代に歴史や自然を活用した地域づくり「全県フィールドミュージアム構想」もあり、歴史博物館は綿密な準備が進められ、設置された。
展示公開部門だけでなく、基礎研究を担う古代文化センターが別途設けられ、発掘調査を担う埋蔵文化財センターとの3面構造が構築された。
この体制が、博物館の運営にうまく活かされている。
古代文化センターでは数年間のテーマ研究を複数同時進行させ、そこには外部の専門家や期限付き雇用の職員も加わって研究紀要を完成させる。博物館の特別展はその成果に基づき、今度は展示的見地を中心に計画され、公開に至る。埋蔵文化財センターの発掘調査成果も展示には多く取り入れられ、時には発掘調査の成果が展示の主体になることもある。
このように基礎研究から展示までが連動しつつ計画的に行われているので、展示内容が濃い。一般受けしにくいようなテーマもあるが、それでも研究成果という地盤がしっかりしているので、骨のある展示が成り立つ。
今回の仏像展も、テーマとしては派手さはない地味なものだが、これまでの研究の過程を断片的に聞き知っていると、なるほどと納得するテーマ設定だ。地に足がついている。なかなか真似できるものではないと感じる。
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