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    2019-07-12 20:44:19 | おーい!中村です!!

海獣(3)泳いできたあいつ





高校生から大学生の頃、しばしば響灘に浮かぶ六連島に釣りに出かけた。
下関駅の近くから渡船に乗れば20分ほどで到着する手近な離島である。

いつものように数人で磯で竿を出していたある日、30分経ち、1時間が過ぎてもウキは海面に漂うばかりで一向に釣れる気配がなく、何かおかしい、今日はどうしたことかと口にし始めた時、ふと左手を見ると何やら泳いでいる。

「あれ? 犬が泳いでる。」

そう、大きめの動物がこちらに向かって泳いでくるのだ。
近づいてくると犬よりも少し丸い顔で、耳がはっきりしない。

「なんだ? これ??」

戸惑っているうちに、そいつはいいペースで泳ぎ続けて目の前、自分たちの竿の下を通過した。

「ラッコ! ラッコじゃないか!?」

「ラッコなんかおらんやろ。」

「いや、この顔はラッコじゃろう?」

目の前を横切ったそいつは、何者かはよくわからないけれど、陸上の動物ではないことは明らかで、アシカか、アザラシか、オットセイか、あるいはラッコか、いずれにしても「水族館」にしかいないはずのものであった。

「あんなんが泳いどったら釣れるわけないわ。」

「なんで、あんなんがおるんか?」

結局その日は針につけたエサが取られることもほとんどないまま、帰りの船に乗ることになった。釣れなかったのはあいつのせいなのか、はたまた他に理由があったのかはわからないが、とにかく釣れない一日だった。
しかし、「水族館」の動物を見たことで一同テンションは高いままその日は別れたのだった。

それから1日、2日後、テレビのニュースに思わず声がでた。

「あ、あいつだ!」

下関の北、角島という島があるあたりでオットセイが目撃されたというニュースだった。

どこからやってきたのか、1頭だけだったのか実は数頭で旅をしていたのか、結局何もわからないのだけど、島で僕たちが見たあいつは、たぶん旅の途中のオットセイだったのだ。

その後、オットセイに出会ったことはない。

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・氏名   中村唯史(なかむらただし)
・生年月日 1968年2月29日
・住所   島根県大田市
・職業   大田の自然史案内人

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