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    2022-05-09 11:25:55 | おーい!中村です!!

定めの松


「昔、三瓶山には名前がある松の大木が何本もあってね、なかでも「定めの松」は三瓶の玄関のような存在だったんだよ。」

 

 何年か後にはそんな話をすることになりそうだ。

 

 三瓶山の老松がついに枯れようとしている。定めの松は石見銀山領の初代奉行でもあった大久保長安が行った石見検地の際に植えられたと伝わる塚松で、かつては道の両側に立つ2本が堂々たる姿を見せていた。

 その名のとおり、三瓶山の「基点」であり、川合町の物部神社前から長い登りを行き、西の原のなだらかな草原にたどり着いたその場所に立っている。この松を基点に何百メートルかの間隔で松が植えられ、雪の日に進む道を示す目印になっていたという。

 

 20年ほど前までは定めの松のそばに馬がいて、乗馬の体験ができた。ここで馬に乗ったことが幼少期の思い出という人は多い。三瓶山の原風景とも言うべき松なのだが、2000年以降、衰えが目立つようになった。松の寿命は400年と言われ、江戸時代のはじめから数えるとちょうどその年くらいにあたる。寿命かも知れないが、樹勢回復の処置がとられ、一時は持ち直したように見えたが、西側の一本は2008年に枯死して伐採された。その2年前にはやはり西の原の目印だった「片腕の松」が枯死しており、2年の間に一気に2本の老松が失われたのだった。

 

 それでも残った定めの松の1本は多くの枝を失いながらも命を留め、老松の風格を見せていた。2020年には日本遺産「石見の火山が伝える悠久の歴史」の構成文化財となり、人の暮らしとともにあった三瓶山の歴史を示す存在としてその価値を再認識する機会を得た。

 

 しかし、2021年の夏を過ぎた頃から、樹勢は再び衰えはじめた。寒かった冬を何とか耐えて力尽きたか、春の訪れとともに葉が色を失い、やがて茶色い枯れ色に変わった。もはや抗うことはできそうにない。遠からず伐採の日が来るだろう。三瓶山を代表する老松がついに姿を消す。すでに枯れた西側の松と同じく、接ぎ木による二世松が植えられると思うが、それが再び老松の風格を持つようになるには100年以上の時間が必要だろう。その時まで定めの松の意味を伝えることができるだろうか。


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・氏名   中村唯史(なかむらただし)
・生年月日 1968年2月29日
・住所   島根県大田市
・職業   NPO法人石見銀山協働会議副理事長

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