「きょうの日はさようなら」

　畑一面に広がる緑を、傾き始めた日が目映い黄色に染め変えた。広大な畑は、島根県大田市川合町にある「近畿中国四国農業研究センター大田拠点」の施設の一部だ。
　「雑草という名の草はない」という言葉を残したのは昭和天皇だった、と伝え聞く。だが、名を知らぬ身には、やはり雑草だ。
　尋ねて、生い茂る草々は、主に野稗（の・び・え）と知った。刈り取った草は飼育されている牛約１６０頭の餌になる。その後に、また牧草の種を蒔くという。撮影日はちょうど整地の真っ最中。耕耘用のトラクターが土を掘り返し、手品のように緑から茶色の大地に変えていく。　
　７割方ならしたところで、この日の作業は終了したようだ。銀杏並木の道をとことこ戻るトラクター。きょうの日がのどかに暮れていく。