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    2018-08-10 02:58:55 | 館長の部屋

しあわせ色の風が吹いています


大人になっても童心を持ち続け、59歳で亡くなるまで数多くの絵本や童画を描き続けた佐々木恵未さん(1955−2014年)。

子どもの頃、小遣いを貰うと文房具店に直行して落書き帳を買い、夢中になって絵を描いた。その喜びは大人になっても変わらない。大学では英文学を学んだが、どうしても絵が描きたくて、日本デザインスクールの夜学にも通った。そこで出会ったのが童画家の有賀忍さんだった。初めて恵未さんの絵を見た時、有賀さんは「心で描いた童心画だ」と感激したという。あえて細かい技術は教えず、「描きまくれ、感情を注げ!」と励まし続けた。

理解ある指導者のお蔭で恵未さんの才能は開花し、24歳の時に現代童画会賞を受賞。さらに海外の展覧会でも入選を重ねた。島根県子育て支援カード「こっころ」の絵は、テヘラン国際絵本イラストビエンナーレ(イラン)で入選した3枚組の絵本の一部だ。

この頃、ポスターやカレンダーなどの注文が相次いだ。割のあわない仕事でも、彼女は一切文句をいわない。絵を描けるのが幸せだった。そんな彼女の絵は明るくあたたかい。それが見る人を笑顔にし勇気づける。

若い頃、恵未さんは心の中にある架空の町を描いていたが、43歳の時に島根に帰ると、ふるさとの風景を描くようになった。そこには山の動物も登場する。みな同じ大きさ。誰もが物語の主人公だ。依頼を受けると、時間をかけてしっかり取材し、喜んでもらいたい一心で隅々まで丁寧に描き込む。その姿勢は一生変わらなかった。中には7月豪雨で大きな被害を受けた江津市桜江町を描いたものも多い。1日も早く恵未さんの絵のような明るい町に戻って欲しい。
アメリカの画家グランマ・モーゼスに憧れていた恵未さん。この人は80歳で初めて認められ、101歳まで描き続けた。モーゼスの描く農村風景や楽しそうに働く農民は、見たままではなく幸せの記憶。恵未さんも同じだ。100歳過ぎまで笑顔あふれる心の風景を描いて欲しかった。

安来市加納美術館の佐々木恵未展の会場。
絵の中に隠れている恵未さんを必死に探す小学生。「シンデレラ」や「火たきすずめ」など恵未さんの描いた絵本を幼子に読んであげる女性。おしゃべりしながら塗り絵を楽しむ若いカップル。2008年から約6年間『山陰中央新報』に連載された「あったか家族」をじっと読む夫婦。そして、時間をかけて恵未さんに手紙を書く男性。みなさんが思い思いに恵未さんの世界を楽しんでいる。美術館にしあわせ色の風が吹いている。
           (山陰中央新報2018年8月9日記事を転載)


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