見上げた空に秋の雲

　　  俗に、雲一つない日本晴れと言うが、秋空は、やはりそれなりの雲があってこそである。この日は天高く、秋を象徴する二つの雲が仲良く並んでいた。
　すじ雲とうろこ雲。すじ雲の気象用語は巻雲（けん・うん）といい、雲の中でも最も高いところに現れる。うろこ雲は巻積雲（けん・せき・うん）で、その次の高さ。いわし雲とか、さば雲とも呼ばれるお馴染みの雲だ。
　２、３年前の秋、島根県大田市の近畿中国四国農業研究センターでのこと。銀杏並木の見事な黄葉を写真に収めようと右往左往の最中、ふと見上げた空に絵に描いたようなこれまた見事な雲を発見。まこと、写真表現とは遭遇による所作ではある。
　さて、今週月曜は霜降。これを「しもふり」と読むと、同じ秋でも、話は食欲の方に行ってしまうが、こちらは二十四節気、秋の季語の「そうこう」だ。暦の上では、霜が降り始める頃なのだが、今年は秋の深まりが遅いらしい。中国地方では、11月中旬から12月上旬にかけてが紅葉の見頃という。慌ただしい師走の紅葉見物、一つしゃれ込むとするか。